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↑口癖は「今日は大丈夫、絶対吐かない。」


by 0214062
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負けないゾ☆当ブログは賞味期限を敵視しております。

 「フン何さ、あたいだってね、銀座じゃ名の知れた女だったんだから!」
 よう子は店主に悪態をつきながらフラフラと店を出た。露出の多い服からは痩せた、疲れた皮膚が目立っていた。ああ、これでまた勤め先を探さなくてはならない、よう子はウイスキーで酔った頭で明日からの生活を考え、絶望した。もう9月も終わる頃で、真夜中の空は町の明かりに照らされた灰色の雲が充満していた。
 「あーもお、いっかなあ、、、。」
 行く先を決めずに歩く場合の、どこか不安定で、今にも立ち止まりそうなくらいのスピードで、やがてよう子は高層マンション住宅街の小さな公園にたどり着いた。そのままベンチに身を委ねて、よう子は彼女を裏切った男たちのことを一人一人思い返した。実業家、ヤクザ、教師、会社員、それから、、、。
 その男は地方から出てきた二十代半ばの青年だった。その頃はよう子も美しかった、百の男から、千の口説き文句を聞いて暮らしていた。青年はどもりで、あまりしゃべらなかったが、いつもよう子目当てで足繁く店に通っていた。よう子は青年の純粋をからかい、しばしば青年に気を持たせるような言葉をささやいた。実直な青年はやがてよう子の言葉を信じた。震える声で男は言った。
「よう子さん、い、いっしょに、青森で暮らしませんか?ぼ、僕頑張って、一生不自由させませんから!」
よう子は真っ直ぐに男を見返し、ゆっくりとうなずいた。その時男はかつてない幸福感で満たされた。

 つづく
by 0214062 | 2004-11-10 02:12